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(6)オイルスリーブ・・・
ここらで、ちょっと2ストの話をしてみたいと思ったのだが、2ストバイクは減少の一途で、あまり関心を持たれる方も多くはないだろう。
関心のある方は読むと面白いかも・・・・・
2ストのシリンダーは4ストと違って、掃気や排気の穴が開いている。2ストにEGS[LIMITED]を使っても意味がない。排気口からEGS[LIMITED]が排出されてしまうからだ。
だが、4ストのようにEGS[LIMITED]やエンジンオイル(エンジンオイル添加剤E.G.A)のようにオイルスリーブを形成出来ないものか?と考えたんだ。
そこで誕生したのがE.G.S[T2]なんだ。E.G.S[T2]は2ストエンジンオイルに混ぜる添加剤なんだが、混ざった2ストエンジンオイルは4ストエンジンオイルの機能と同じと考えて欲しい。
ご存知のように2ストエンジンにはオイルリングが無いのでエンジンオイルを掻き落とすことはない。又、燃焼室にもエンジンオイルは燃料と共に入ってくる。
エンジンオイルに混ざったE.G.S[T2]やエンジンオイルWOO[R](WOO)はシリンダー壁とピストン側面の隙間に滞留しオイルスリーブを形成することになる。
分離給油では問題なくオイルスリーブを形成出来るのだが、混合で使用する場合、薄い混合比だとオイルスリーブを全く形成しない。程度もあるが濃い混合比の方が良い結果が得られる。
オイルスリーブが形成されると4ストのようにコンプレッションが高まり、燃焼効率を上げる事が出来る。
4ストエンジンオイルのところでも話したが、燃焼効率が上がると爆発に使われる燃料は少量で済む。
よく爆発力が勝ると言ってオイルの混合比を薄くする人がいる。これは間違いで爆発には一定量の燃料しか使われない。
その証拠と言っては何だが、混合比を薄くするとピストンやリングなどの内部パーツの消耗が激しくなっているはずだ。特にレースなどでは、後半パワーダウンする位、混合比を薄くすると内部パーツは消耗する。
オイルスリーブを形成させることが、どれだけ重要かが解ってもらえたかな・・・・・
オイルスリーブって名称は、ビトッチと2ストエンジンオイルの話しをしている時に
「オイルの膜みたいなもんだ」
と説明したが、理解出来なかったみたいで、ビトッチがじーっと考えて
「オイルのスリーブみたいなヤツって理解すればいいのか?」
って言った。おいらは
「その通り!」
といったので、オイルスリーブはビトッチが命名した。
独り言:人の体や命に関わるモノ、例えば食品に何か不都合が発生すると「摂取してもとりあえず問題はありません」と発表され、その商品を回収したりする。
回収するのって凄く費用がかかると思うので問題がないのなら、そのままにしとけばいいのにと思ってしまう。よく株主は黙っているなといつも感心してしまう。
最近では放射能に関し同じようなこと言っている。問題ないなら何も発表しない方がいいと思う。でも放射能が人体に与える被害の数値って本当はどのくらいって言える人っているのかな・・・・・
(5)そお言えば・・・
おいらが中学生の頃のエンジン飛行機をやってた時の話しだが、当時エンジンに消音装置の装着義務が無かった。
おいらは乗れもしねぇくせにバイクが大好きで、当時流行っていたフィッシュテールのマフラーがカッコイイと思っていた。
エンジン飛行機のエンジンにもマフラーを創ってみたいと予ねてから思っていた。ダチのブリキ屋の息子から大量にブリキ板をもらっていた事もあって、このブリキ板でマフラーを創ってみようと思ったんだ。
第一回試作のマフラーがおいらの馬鹿さ加減を露呈することになるんだ。
何と!!高温にさらされるマフラーをハンダ付けで創っちまったんだ!!
フィッシュテールのカッコイイマフラーに、意気揚々と鎌さんの待つ飛行場に向かった。鎌さんがおいらの創ったマフラーを見るなり、一瞬だが驚いた表情を見せたんだが、直ぐニコッと笑った。早速、消音効果のほどを聞くためエンジンを始動したんだ。始動して直ぐおいらの創ったマフラーはバラバラに吹き飛んでしまった。
ハンダが全部熔けてしまったのだ。
ショックでしばし呆然としていた。鎌さんがアイデアは良かったんだがハンダはダメだよって言われた。一念発起、ハンダ以外の方法を考えることにした。ロウ付けや溶接を知らないおいらがやれるのはビス止めしかない。
何十本も2ミリのボルトナットを使いフィッシュテールマフラーを創った。今度は大成功、音量も半分位になったような気がした。鎌さんも凄いなって褒めてくれた。
パワーダウンはさほど感じなかったが、音の迫力が無くなってしまったのでマフラー装着は止めてしまった。と言うより当時どんな競技会に参加してもマフラーなんて付けてるヤツはいなかったからか、何故か判らないが恥ずかしかった。
とにかく前述したマフラーなど数多くの失敗をした。しかし、必ずと言っていいほど克服してきた。
そんな若い時の経験からか、油の試作ではあまり失敗することは無い。
この試作品、テスターによってはダメ出しされることがある。それを失敗と称するならホンの少しの失敗はある。
そお言えば、円陣家を始めた頃は嫌って言うほど色々と叩かれた。専門誌でも叩かれた。本当にまいった。それらの評価を他所に何故か商品は売れていった。そしてお客から励ましの言葉をもらうようになった。
当時、このお客の励ましがなかったら、おいら自身潰れていたと思う。
日増しに評価されるようになり、叩かれることが少なくなってきた。今思えば叩かれるって言っても内容は根拠のない軽薄なものだった。
油業界を脅かす量の販売をしようとか全く思ってないし、他社が販売しているものとはかけ離れている考え方で創られている商品であることや他社と同じような製品をパクって作ってやろうって考えている訳でもない。円陣家を叩いたって何の足しにも得にもならないと思うんだが・・・・・円陣家は中小企業ではなくナノ企業なのに・・・・・販売だって未だにナノ的販売量で細々とやっている。
だって訳の分らない会社が創る訳の分らない商品なんだから気にすることはないと思うよ・・・・・おいらでも一歩退いてみれば、その通りだと思う。
広告宣伝を全くしないし、昔はステッカーなど配ったこともあったが、現在はステッカーの配布もしていない。でも、時々一般道やサーキットでステッカーを貼ったバイクを見かけると言うが、これは器用なユーザーや一部の販売店が創ったモノで、円陣家が創ったモノではない。
おいら個人としては凄く嬉しいんだが、あまり宣伝して欲しくないと思ってるんだ。只販売店は別で、売ることが仕事なので販売促進しないでくれとは言えない。
お客や販売店の励ましで、逆に自信が出てきた。叩かれれば叩かれるほど商品に対する想いは確信に変わっていった。天動説、地動説じゃないが、想像のつかない真実は当初否定されるモノかもしれねぇ。
おいらが困っている時に助けてくれたお客や販売店、どんなに感謝しても足りない。おいらは人情ってぇモノに弱いんだ・・・・・そして人情を大切にする・・・・・
独り言:よく幻の何々と表現されるものが存在する。存在する以上幻の何々と表現するのはおかしいと思うのだが・・・・・
かつて存在し今は存在していないから幻と言うのでは・・・・・
(4)何か変だ!?
世の中には理屈に合わない事やモノがある。
重力のあるところで生きることが出来る人間が無重力の宇宙に行こうとするのは何故なんだろう。
異星人(知的生命体)がいるとしても地球に来れないのは無重力に適合した身体が、地球の強大な重力に耐えられないからかもしれない。
空力を駆使して、抵抗を少なくすることが絶対なF-1マシンなのに、何故フロントやリアウイングなど、わざわざ大きな抵抗を与えているのだろう?
そりゃあ浮き上がるからさって言うかもしれないが、モトGPマシンはF-1マシンと同じように300Km/hを越えているのに浮き上がったりしない。F-1マシンより遥かに重量は軽く浮き易いはずなのに、フロントウイングもリアウイングもついていない。
もういい加減、空力ではなく水力を使ったらいいのでは?とズーっと思っている。水力?・・・・・そお、水面下に隠れている船舶の形状・・・・・モトGPマシンのカウルの形状って・・・・・
前後のウイングを無くしたらとは言わないが小さく出来れば、あらゆる意味で負担が減るんじゃねぇかな・・・・・何か変だ。
政治の世界で酒を飲みながら重要な決定が為されているのをニュースなどで見かける。昔からの慣習なのかは知らないが、こんなことやってるから世の中上手くいかないのかもしれない。
酒を飲んでまともな意見交換や判断が出来るとしたら、飲酒しても運転はしっかり出来るはずだ。しかし、飲酒運転は禁止されている。何でだろう。ある新人議員が当選した後に一流料亭に行けると言ったとか・・・・・何か変だ・・・・・
タバコのことに関することはムキになっても、酒のことになると口を噤んでしまうテレビキャスター。よくよく見ているとスポンサーがお酒関連の会社だったり、あるいは自分が酒大好き人間だったりして・・・・・タバコが飛行機を停めるってぇのを聞いたことないなぁ・・・・・飛行機は禁煙だが、飲酒はOK、更に機内で酒を売っている。へべれけになった客の相手って大変でしょう?CAさん・・・・・タバコ吸っててホームから落ちたって聞いたことないなぁ・・・・・酔っ払いの相手って大変でしょう駅員さん・・・・・何か変だ。
酒を飲んだり、タバコを吸ったりすることを反対している訳ではない。おいらは酒もタバコもやらないのだが・・・・・何か変だ・・・・・
燃費を競うレースで坂道(下り)になるとエンジンを切ったり、惰力が無くなるとエンジンを再始動したりと現実離れしたレースは何を目的にしているのか良く解らない・・・・・何か変だ・・・・・
100ccミニバイクのレースで125ccや130ccを越える排気量のバイクが走っている。昔2ストが主流だった時代、排気量はキッチリ規定されていた。ちょっとオーバーだがリューターやヤスリがあれば勝つことも出来た。今はお金がないと勝つことが出来ないようだ。一般の人が出るレースでお金がかかるレースはいつか衰退して行く・・・・・歴史が物語っているはずなのに・・・・・何か変だ・・・・・
独り言:人の手の入っていない景色を観ていると、とても美しく感じる。そして心が休まるような気がする。何故だろう。きっと自然のルールに従っているからだろう。
本当に美しいモノって自然のままのモノかもしれない・・・・・
(3)後継者
おいらの後を継ぐ者を育てなくてはならないと思った時があった。
周りにいるヤツ等の中から選ぼうと考えた。条件をおいらなりに創った。
その一番目が口が堅いことだ。二番目は何事も諦めない芯の強さだ。三番目がおいらの考え方をどれだけ理解しているかだ。
先ずこの三つの項目を基に人選を試みた。関西で一人、東京で三人を選んだ。そして仕掛けたんだ。仕掛けられた人は仕掛けられたと思ってないかもしれない。只ビックリしのでは?と思っている。
関西の一人と東京の一人は残念ながら口の軽さが災いして選抜から抜けた。
その東京の一人は直ぐ諦めてしまう芯の弱さもあったのだ。現在二人が残っているが、予断は許さない。頑張って欲しいものだ。
落選した東京の一人は独立させてあげたかったが残念な結果となった。ヤツは地方から東京に出て来て一時期チャランポランな生活をおくってきたが、おいらの一言で一念発起、車体整備士と自動車整備士のライセンスを取るためにバイトしながら専門学校に通った若者であるだけに残念だ。選抜されたと、本人は未だに気付いていないと思う。
第二段階の選抜条件は創造性と慎重性だ。
仕事が出来る出来ないって何だろうって考える。学力でないことは政財界を見ていれば解る。
おいらの勝手な判断だが「肝心なこと」が解らない、つまり真実が見えないヤツ等は仕事が出来ないようだ。
頭は悪いより良い方がいいんだが、絶対的な要素ではない。どれだけ真実に向き合えるか、その真実にどれだけ対処出来るかが重要だと思っている。
何も仕事だけではない。私生活に於いても自分の周りに起こっている事、特に嫌なことに背を向けていれば、嫌なことは通り抜けて行ってくれると思っている人がいるが、嫌なことって自分の周りに残っていることが多い。
時には形を変えて居座っている。
忙しい忙しいと言いながらも仕事が全然進んでないヤツがいる。やらなきゃいけねぇ仕事に優先順位をつけて順番にこなして行けば、意外とスムーズにこなせる。
仕事が進まないヤツは必ずいっぺんにやろうと考えている。どんなに仕事が出来るヤツでもいっぺんに仕事をすることは出来ない。忙しいって言っているヤツで忙しいヤツを見たことが無い。
余談だが、両親以外でおいらが最も尊敬する人は本田宗一郎氏でかみさん以外で大好きな人間はハワード・ヒューズ氏で鎌さん以外のヒーローはスティーブ・マックィーン氏だ。
夫々の考え方や生き様がとても魅力的だからだ。
番外で東京堂の二代目のおやっさんは理由は良く分らないのだが魅力のある人だ。
独り言:行きつけの床屋がある。おいらの二年後輩が先代の親父の跡を継いでやっている。何ヶ月に一回行っているが、いつもおいら一人だ。
整髪が終わった後もお客が来る気配が無い。来たとしてもほとんどが年配の人だ。整髪しながら昔話に花が咲く。楽しく、息抜きが出来る一時だ。整髪も黙って座ればいつもの髪型に仕上げてくれる。
若いヤツ等は理容室ではなく、美容室に行くようだ。後輩がやっている限り行こうと思っている・・・・・
(2)非売品
仕事上毎日商品のことを考えている。
アイデアが浮かぶと試作しテストする。現行のものより良ければレシピを書き換え、商品のマイナーチェンジを行う。基本的にこの変更は一切発表せず市場にリリースしている。
使い慣れた円陣家ユーザーで敏感な人なら性能がアップしていることに気付くかもしれない。
試作している中に途轍もなく性能がアップしてしまうモノが出てくる。これらの試作品はハッキリ言って絶対に市場に出すことが出来ない。この試作品は円陣家に貢献してくれている人達に使ってもらっている。
ほとんど全商品に亘り、この試作品は存在している。
この試作品の中に「?(ハテナ)」オイルと称するものがある。チェーンオイルやABSOフレンドやグリシンLGの代わりに使えるマルチパーパスオイルだ。
この「?」オイル、どこに使っても現行の商品より優れている。ある販売店の代表がお客のチェーンに「?」オイルを使ったんだ。
このお客が違いに気付き、このC.P.Oを市販してくれと懇願されたと言う。代表からおいらに電話で将来的な販売の可能性を聞かれたが「ノー」と伝えた。現在、販売は時期尚早と思っているからだ。
これらの試作品は偶然に出来上がるものではない。おいらがズーっとこうしたいと考えているものがあるんだが踏ん切りがつかないでいる。タマタマ傍にいた人に背中を押されて試作してしまうものがある。勿論傍にいる人は試作させようとして言った訳ではなく、おいらと何気ない会話の中で、おいらが勝手に背中を押されたと思って試作してしまうのだ。
そんな中に山本鯨の親父さんに一押しされて試作したエンジンオイル等がある。
これらの試作品を使っている人のことは明かせない。ちょっとオーバーだが視聴率調査と同じで人知れず長期テストをしてもらっているからだ。本人も知らないで使っている場合もある。
おいらが黙っていても使っている人のほとんどが気付いている。使ってしばらくすると、おいらに「何かした?」って必ず言ってくる。おいらは「別に」って答えていたが、最近ではほんのチョットだが種明かしをしている。
近所にシボリの職人がいる。東京堂の若旦那のダチで若旦那の紹介で知り合いになった。本職のシボリの他に趣味がバイクと言う事からか、頼まれるとバイクのワンオフパーツを創ったりしてる。
ヤツの親父さんが健在だった頃、シボリに使う油をヤツから頼まれたんだ。ヤツの工場に行き作業を見てみた。見なきゃ適した油は創れねぇからな。ヤツの親父さんはかなりの高齢なのか作業の中心はヤツのように感じた。
試作品を創りヤツに渡した。シボる金属も何種類かあったり、急ぐ時にスピードを上げないといけない場合もあるらしいんだ。一番過酷な使い方をする状況のモノを創れば、後はヤツが粘度調整することで対応出来る事が判った。
大量消費するような油ではないので数年に一度創って渡している。もちヤツ以外の誰にも創る事はない。
ヤツの親父さんが亡くなった。葬式に行った。親父さんの人柄か大勢の人が来ていた。生前の話だがヤツに親父さんが、おいらのことを大切にしなさいと言ったらしい。老練で頑固な職人においらの油が認められた瞬間だ。おいらが油を創れる限りヤツに創ってあげようと思っている。
イヤーっ油って本当に楽しいモノですね・・・・・
独り言:おいらんとこに出入りしている連中はほとんど独身だ。仕事は夫々上手くいっているようなんだが、仕事に熱中しているのか彼女がいない。
これだけはおいらでもどうしようもないんだが・・・・・